「・・・どうした?」
先生は珍しく、険しい顔つきになっている。よほど泣きだした自分に驚いたのか。
先生に言われてハッとした私は、焦りながら目をこする。
いつもならときめく険しい顔。でも今日だけはなぜか、冷静に受け答えをする自分がいることに私は気づいた。
「ハイ、だいじょうぶです!あまりに短すぎる髪が面白すぎて、涙出ちゃいました」
「それ、ほんとう?」
「よほほほほい」といつも通りの奇人笑いをためらいなく披露する私。
それでも先生は納得がいかないような顔で、「うーん」と首をかしげている。
「元気ないんじゃない?あなたいつもはもっと、こう・・・ぼーっとしてるじゃない」
「イエイエ、私はいつも通りですよ」
さりげなく失礼なことを先生は言う。間違ってはいないのだが。
この先生の言葉から解釈するに、奇人っぽくない私は私じゃないというのか。
優等生っぽく笑う私は、私じゃないのか。
奇人っぽさが私の象徴になっているというのか、まさかそんなはずはない。
それからは私の髪に話題が触れることなく、いつも通りの授業に移った。
先生への恋心は、どこへ消えてしまったのだろうか。
今日だけは愛しの加藤先生が「普通の中年」に見えた不思議な一日だった。
髪が短くなったことと、どう関係があるのだろうか。
