そんな私の様子を察した優しい美容師は「お代は要りません」と言ってくれたのだが。
なにも美容師の責任ではない。現に回想の結果、私自身が確かに申し出ていたのだから。
今度はこの髪型で生きる方法を考えるしかない。
今までだって奇人であっても十分生きてこれた。山賊でナンボである。
私が会計で財布を出した時、ふっと自分のいた席を振り返った。
自分のあの長い髪は、美容師の手によってほうきではかれ、チリトリの中に消えてゆく。
はかなき青春を共に生きた髪の毛の、あまりにもあっけない最期。
再び涙が出そうになった私は、すぐに目をそらして、会計を済ませた。
「ありがとうございました」
「どうも・・・」
例の美容師は申し訳なさそうな顔をしたまま、私に釣銭を手渡す。
山賊ヘアのまま軽く会釈をした私は、ヘアーサロンカトウをあとにした。
結局カトウという人物もわからずじまいのまま、この美容院で私は山賊頭のみを得たのだ。
