なのになぜ、鏡の向こうの私は・・・
「あれ、山賊ですねえ・・・」
放心状態になった私は、うつろな瞳で自分の姿を確認する。
そんな私の横で、美容師のお姉さんは気まずそうに笑っていた。
「一応、お客様の申し出の通り切らせていただいたのですが・・・」
申し出?いつ私が山賊にしろと言ったか。
「そうですかあ、はははははっはっは」
もはや笑うしかないとは、こういう事態のことを言うのではないか。
何度鏡を覗いても、現実は同じ。
ぶわっと広がっている髪全体、でも短いから毛先はジャキジャキ状態である。
鏡の中の私は、山賊のようなワイルドなショートヘアになっていたのである。
まるで野蛮人。まるで暴れん坊なガキ大将。
しゃれっ気のかけらのひとつもない、乱雑なショートヘア。
まさかこの愛らしい美容師が、なにも理由もなくこんな髪型にするとは思えない。
だがしかし自分でもこの数分間に何が起こったのか、覚えていないのだ。
