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「やれやれ・・・・無駄な体力を使ってしまったよ」
「旦那様は人が良すぎます。
あのような者、言ってくだされば切り捨てたのに」
思わず本音をこぼすシャーロットに男は顎を撫でながら苦笑する。
狐であるはずなのにその立ち居振る舞いはどこかの貴族のようだった。
「私たちに出来る事は限られているんだよ。
何をしても、結局はここを守るクイーンに全ての権限がある」
サンシェットの街に王はいない。
近隣の村や町もそれは同様で、
このあたりで最も大きな大国といえばゲルマン王国ぐらいのものだった。
サンシェットは植民地ではないが、
貿易の点ではゲルマンにとってとても有益だったため、
治安を良くする代わりに、という交換条件で
こちらには警備隊が日々横行し、女王に通達が生き届く。
なぜ女王かというと、
ゲルマンに即位していた前王グランが亡くなった時、
彼の子どもも生まれてすぐに病死してしまったため、
その妹の現クイーン・ラナが役目を引き継ぐことになったのだった。
「間接的に統治なさっている女王ですか。
この街の現状も知らないようでは・・・・とても賢明とは言えませんね。
ただでさえ女王というのは非難の対象になる事が多い・・・
その上まだ15と若くいらっしゃる。
仕方のない事とはいえ、帝国の将来も危ぶまれます」
「彼女が決めたのだから仕方ないだろう?
女王の命令は絶対だ。
住民でないとはいえ、私たちにもその力は作用する」
ヘタをすると命が危ないよ-----
ウインクしながらそう言う男にシャーロットは一瞬見つめて息を吐いた。


