「涼平くんのお母さんはね、昔、人を殺したの」
「っ…!!」
-お母さんと言っても今のお母さんじゃなくて、産みの母の千夏さん。
千夏さんは高校のころ、あるクラスメートを苛めてその子を自殺へ追いやったの。
もちろん刑務所に入って、罪を償った。
その時にはもう、20を過ぎていた。
千夏さんはクラスメートを自殺に追いやって、初めて命の大切さに気が付いたの。
あまりに弱くて、大事にしなきゃいけないものだと。
すでに彼女の心は更正していた。
彼女は月に1度は、殺してしまったクラスメートのお墓を訪れた。
いずれ千夏さんは結婚して、子供を授かった。
それが涼平くん。
涼平くんは沢山愛情もらって成長した。
千夏さんはたびたび、涼平くんをお墓に連れて行った。
命は大切。
罪は消えない。
幼かった涼平くんには罪の意味が分からなかった。
ある日、いつも通り千夏さんと涼平くんがお墓参りをしていると、老夫婦がやってきた。
老夫婦はもちろん、死んでしまったクラスメートの両親で、千夏さんが頻繁にお墓参りをしてることを知らなかった。
老夫婦は出会った千夏さんが、娘を苛めてた人間だってすぐ気が付いた。
突然千夏さんに水をぶっかけたの。
娘を殺した人間が、幸せそうに子供連れて墓参りしてる。
もう来ないで、人殺し。
千夏さんはすみませんと呟いて、涼平くんの手を掴んで走った。
大好きなお母さんが水をかけられて、人殺しと言われた光景は幼い涼平くんのトラウマになった。
すぐに千夏さんは離婚届けを置いて家を出た。
涼平くんが7歳の時。
5年後、新しいお母さんがやって来た。


