沈黙が続く。
…そろそろ動こうよ、高梨。
「おい。おーい、高梨ぃ~」
「あ、あぁ!悪い…こんな気はサラサラなくて…」
「誰もそんなこと思ってないよ、相手は私だぞ?ていうか早く」
「たっだいまあ!!…って…え?…なに…してんの?」
さ い あ く だ。
まさかのタイミングだ。
なんだよ、息でも合わせたのかよ。
「いや、これはその…!」
「おい涼平!相手は真兎だぞ!?お前なら他に可愛い子がいるだろ!?」
「彰人、お前失礼なこと言ってんの気が付いてる?気づいてなかったら泣くよ、私」
彰人が高梨の肩をつかんで前後に振る。
彰人は私なんてどうでもいいって顔つきだ。
この野郎。
「はあ、高梨早く除け」
「ごめん…」
「ま、バランス崩しちゃっただけでしょ?真兎ホント、どんくさいし」
「さすがだね、何?見てたの?」
「真兎、私あんた貶したけど気づいてる?」
ああ私は鈍くさいよ。
鈍いんだよ、私。
ようやく解放された私の体。
「てかさ高梨。私の指示したトレーニング、ちゃんとやってんだね、前より筋肉ついてた」
「え、わかったの?」
「私はマネージャーだぞ?舐めるなよ」
押し倒された時に気が付いた。
1年の最後に言ったトレーニング。
ぜったい高梨サボると思ってたのに。
あの時は高梨嫌いだったなぁ。


