父様は仕事で忙しくて、母様は身体が弱い。


その為私に構っていられなかったし、私もそれを当たり前だと思って過ごした。


寂しかったけれど。




母様の代わりか、私のまわりは女性がいっぱいで男の人と触れ合う機会なんてなかった。


側にいる女性だってほとんど知っている人。


見知らぬ人なんかじゃない。


それを証明するのが私と1つしか歳が違わない香織ちゃんだ。




彼女は私の侍女だけど、イトコ。


香織ちゃんのお母さんは、母様の妹で私にとっては叔母様。


何でそんなイトコであり旺宮の血を引く彼女がそんなことするのかはよくは分からない。


けれど代々のしたきりらしく。


叔母様も母様に同じように仕えていた。




そんなわけで私は執事がつくことに驚いたわけですが。


その執事になる彼がそれはまた凄かった。




「香澄 蓮と申します」



そう言った心地よい低いテノールの声。


さらさらの少し長く伸びたストーレートの髪。


その髪は色素が薄く、少し茶色っぽかった。


目はすっと切れ長に伸びていて何とも整った顔立ち。


それにおまけで長身で細身で。


所謂完璧なイケメンで王子様みたい。



燕尾服がもの凄い似合っていた。


それはもう見惚れてしまうほどに。