お母さんは毎日どこに行くのか、
あたしたちを置いて出かけて行った。


「人間に見つからないように、じっとしていなさい 
お母さん以外のネコが来てもじっとしているのよ?
それからネズミも、
お前たちはネズミより小さいから食べられてしまうわよ
絶対に外に出てはダメ
大きな黒い鳥にさらわれてしまうから」


そう言って出かけるの。


このプラスチックの樽の外は
怖い所だと教えられていた。


目が見えるようになっても、
まだ小さくて動きが遅いあたしたちは
樽の中でまあるく固まりながら
いつもお母さんを待っていた。


暖かい日、
どこかでバタバタと音がしたり、
お母さんが教えてくれた人間という大きな生き物の声が
聞こえてきた。


それに美味しそうな匂いも。