ドレッサーの前に行くと、引き出しを開けて口紅を取り出した。


その口紅は四角柱で蓋を取って土台を回すと、中身が出てくる。


それは、私が持っていない真っ赤なルージュだった。


きっと、持ち主は大人の女性だ。


私はその持ち主の女性の姿を想像した。


赤い口紅をつけた美女が思い浮かぶ。


その人が私の恋のライバルか、もしくは遠藤さんの元彼女だ。


どんな人か、見てみたい。


たとえ、過去の終わった恋でも相手がどんな人だったのか、どんな終わり方をしたのか気になる。


よもや私のような女子高生ではないだろう。


遠藤さんと真っ赤なルージュの女性の繋がりが知りたい。


私は、その口紅を引いてみた。


ドレッサーの鏡に自分の顔を映す。


真っ赤な口紅は、私の風呂上りにパジャマ姿のすっぴんに浮いていて似つかわしくなかった。


また、別の機会に試してみよう。


そっと、口紅をティッシュで拭き取って私はベッドに潜り込んだ。