後悔先に立たずということか。


「薫にそっくりの女の子が産まれたらいいんだけどなあ。今、もう何ヶ月なの?」


「何ヶ月かわからない」


優に聞かれて私がそう答えると花音が私を見ながら、こう言った。


「まだ、三ヶ月か四ヶ月ってとこかなあ? 私と出産時期がかぶるね。誕生日が同じになったりして!」


優が腕組みして首を傾けた。


そして、それから指を折って何かを数え始めた。


「何してんの?」


優の不審な行動に花音が口を出す。


「いや、出産はいつになるのか計算してたんだよ。もしかして、夏頃にならない?」


「うん。夏頃出産予定。私の『つばさ』は夏になったら産まれてくるんだよ。楽しみ」


「夏か。じゃあ、女の子が産まれたら『あやか』だな」


『あやか』という言葉に心臓がピクンと跳ねた。


この名前には反応せずにいられない。


「夏と書いて『か』と読むだろ? 『あや夏』って名前にしたい。可愛いから」


私の気持ちをつゆ知らず優は穏やかな笑みを湛えていた。


『あやか』というのは葵の子供の名前だ。


葵と夏子さんの間にいる娘が彩夏だった。


その名前だけは付けたくない。


「『あやか』は嫌」