リサは、涙でびしゃびしゃのまま笑顔になりました。

クマは顔をなめてあげました。

「でもぼくは、森に帰らなきゃいけないんだ」

「わたしもよ。町にかえらなきゃいけないの」

「会えなくても友達だよ」

「一緒にあそべなくても?」

「そうだよ。だから、ぼくのことをずっと忘れないでね。ずっとずっと友達だから、覚えていてね」

最後にもういちどリサの顔をなめると、クマは春の山のなかに消えていきました。

白いヤマザクラや黄緑に芽吹いた木々の間を抜けながら、クマは何度も振り返りました。

じっと見送りながら、リサはたくさんのことを考えていました。


どうして会えないんだろう。

どうして友達なのにいっしょに遊べないんだろう。

クマが友達なら、友達のためになにができるんだろう。

どうしてこんなに嬉しくて悲しくてよくわからなくて、頭と心がぐるぐるしているんだろう。