「止めといた方がいいってさ、ここまで来て引き返せって?」
「無理にとは言わないけど、あんたの人生だし。ただね・・・」
含みを持った言い方。考え、言葉を失わさせるには十分だ。
「どうしたの?止めるの?」
あまりに考え込んでいる僕を心配し、母親から聞いて来た。
「うーん、止めとく・・・」
「えっ、本当に?」
「あ、違う。結婚を止めるのを止めとくって事。つまりはする。」
「なんだ、そうか。お母さん、どうしようかと思っちゃった。」
「なんだよ、止めさせたいの?止めさせたくないの?」
「そんなのお母さん、わかんないよ。あんたが決める事なんだから。」
「だろ?だったら、結婚するよ。例え、他の人と結婚する事になってもさ、親は必ずいるんだし。それに昔と違って、そんなに親戚付き合いとかもなくなっただろう?おそらく、大丈夫じゃないかな?」
こう言った僕は忘れていた。僕は母親と逆なのだ。選択全てが、悪い方へ悪い方へと向かうタイプ。テストなんかではじめに選択したのは正しかったのに、間違っている気がして誤ったものを選択し直す。あのタイプだ。
「そうね、そうかもね。」
僕たちは電車に乗った。