「大人になった。あの頃よりも」
「なるだろ、普通に」
俺は苦笑した。
茜が茜じゃないみたいだ。
いつもよりも小さく見える。
茜は下を俯く。
「あたしよりも…大人になって…置いてきぼりになったみたい」
「茜は…大切な人がいるんだろ?いつまでも…俺の傍にいるわけじゃない。…同じじゃないんだから」
「……そうだね」
今は茜に大切な人がいると知っても、素直に喜べる。
茜にちゃんと笑顔を見せられる。
きっと…大人になっていっている。
俺は…前に進めている。
この初恋も…俺の大切な過去。
君が大切だと感じる。
「今度…会わせろよ?そいつに」
「…うん」
茜は振り返り、微笑む。
俺も…ちゃんと芹奈に話さないとと改めて思った。
茜を見送ったら…話そう。
俺がそんなことを考えていると、茜がじっと俺を見る。
俺が首を傾げていると、茜は何故か笑みを浮かべる。
「ちゃんと話しなよ?」
「…分かってるって」
俺は苦笑した。
茜は心配性だなぁ…。
やっぱり母親みたいだ。
「…茜は気にしなくていい。これは俺と芹奈の問題だから」
俺がそう言うと、茜はぶんぶんと首を横に振った。
「…あたしのせいもあると思う。芹奈ちゃんが羨ましくて…いじめちゃったもん」
「だとしても、茜は気にしなくていい」
茜が素直だと調子が狂いそうだ。
俺はドライヤーの電源を切り、茜の頭をポンッと叩いた。
茜はふっと微笑み、小さな声で「ありがとう」という。

