それを聞いて、誠は眉をひそめる。
「じゃあ…何で……」
「きっとおれも…まだ忘れきれてないんだよ」
あの時の想い。
茜が好きだったという事実
俺はまだ…心の奥底で茜のことを想っているのかもしれない。
自分が気付いていないだけで…
「そのままじゃ…また楠のこと、傷つけるぞ」
「分かってる。…分かってるよ」
だけど…どうにもできない。
今…茜に想いを伝えたら芹奈を傷つける。
想いを隠し続けても…きっと芹奈を傷つける。
俺には選択肢がこの二つしかない。
どちらも芹奈を傷つけてしまうという選択肢。
一体…どうすればいいんだろう。
「でも…分からないんだ。この想いをどうすればいいのか…」
茜が好きだったという想いを俺は消せない。
今は芹奈が好きだと思っているはずなのに。
いや…本当に芹奈が好きなのかもわからない。
久しぶりに茜に出会って、俺の気持ちが分からないんだ。
「どっちとも傷つける…それは分かってる。でも…自分でどうすればいいかわからない。この想いが本物なのかどうかも…」
「好きなら…本物なんじゃね?」
「……どうだろうな」
俺自身もこの気持ちは分からない。
分かるのはこの想いがどちらかを傷つけているということだけだ。
芹奈は…気が付いているのかもしれない。
俺の想いが…迷っているということに。
だから…あんなに悲しそうな顔をしていたんだ。
だけど…俺に言えなかったんだ。
「ちゃんと…考えるよ」
向き合わないといけない。
じゃないと…もっと芹奈を傷つけてしまうから。

