「馬鹿みてぇ…」



誠の言うとおりだ。
俺には芹奈がいるのに、茜が来てから何故かおかしい。



俺は頭をガシガシと掻いて、その考えを消すかのように頬を叩く。



とりあえず、下に降りるか…
俺はジャージに着替えて、下のリビングに向かう。
リビングに行くと、母親と茜が楽しそうに何か話している。



「あ、蒼」



茜は俺に気付き、手を振る。



「もう、遅いよー。ご飯冷めちゃうよ?」



「わりぃ…もしかして、待っててくれたのか?」



「当たり前でしょ?皆で食べたほうが美味しいじゃん!」



こういうところは昔から変わっていない。
ちゃんと相手のことを考えている。



誰かを一人にしないほうに…
傷つけないように…
悲しませないように…
寂しがらせないように…



時々、自分を犠牲にして。



俺は間違っていたのかもしれない。
変わったとしても、茜は茜だ。
昔から知っている茜がどこかに残っている。



やっぱり…本質的には変わらないんだな。
俺は少し安心していた。



「…ありがとな」



「いいえ」



茜はにっこりとほほ笑み、手を合わせる。
久しぶりに家族で食べた食事は茜のおかげで少し楽しかった。