それは芹奈と付き合い始めてちょうど一か月がたとうとしていた時のこと。
芹奈と付き合った後が心配だったが、何事もないように平和な日々が過ぎていた。



後で知ったことだが、森川 愛が他の子に伝えていたらしい。
愛には…感謝してもしきれない。
ただ…愛の幸せをひそかに願った。



そんな平和で幸せな日々が、ある子の存在で崩れかけて行った。



それは、芹奈が俺の家に来た時だった。
芹奈は俺の部屋の本棚にあったアルバムを見つけ、嬉しそうに眺めていた。



「可愛い…蒼と…この子は…誠くん?」



「そう。誠とは幼なじみだからな」



どのくらい長い時間いるのか分からない。
ただ、いつもそばにいた。



幼なじみっていうより、親友といった感じ。
頼りになって…まるで兄弟のような感覚だった。



「いいなぁ…。…この子は?」



写真を見つめていた芹奈はある女の子を指す。
小さいころのおれと誠に挟まれて、嬉しそうに笑う女の子。



「あぁ。こいつも幼なじみなんだよ」



「違う高校なの?」



「いや、親の仕事の都合でアメリカに行っちゃったんだ」



あれは小学校に上がってすぐの夏の頃だった。
夏休みに入ろうとしている日に、俺の家の前に赤いランドセルを背負った女の子がいた。



『蒼…』



その子はすごく悲しそうにしていた。
さっきまで泣いていたのか、目が赤かったのを覚えている。



『どうした?』



『蒼は…あたしのこと、好き?』



『きゅ、急にどうしたんだよ』