『…良かったじゃん』
電話口で誠は嬉しそうに祝福してくれた。
思わず俺も笑みを零す。
「…誠のお陰だよ、ありがとな」
『おせっかいだったと思う。杪まで使ってさ…』
と、誠は苦笑していた。
大体のことは芹奈から聞いて知った。
誠は誠なりに俺のことを心配していた。
言葉には出さないが、長い付き合いだ。
なんとなく、わかっている。
「お節介じゃねぇよ。…逆に心配かけてごめんな」
『…全くだよ』
そう言っているが、誠がそう思っていないことを俺を知っていた。
だからこれ以上、なにも言わないでおく。
これ以上言ったって、誠の言うことは分かっている。
「じゃ…またな」
『…あぁ。ちゃんと支えてやれよ』
「…分かってる」
言われなくても、そういうつもりだ。
芹奈を支えるって…決めたから。
今度こそ…君を悲しませない。
電話を切ると、芹奈が不思議そうに俺を見ていたことに気がつく。
「…蒼?誰からの電話だったの?」
「…ん?俺の親友」
「…杪ちゃんの彼氏さんだったよね?」
俺はこくりと頷く。
芹奈は何故か嬉しそうにほほ笑む。
「仲が良いんだね。……会ってみたいな」
「また紹介する。今度、4人で遊ぼうか」
「うん!」
芹奈の笑顔を見るのは久しぶりだった。
胸の鼓動がドクンと高鳴る。
初めて出会って時よりも…
芹奈の笑顔が俺の目には美しく見えた。
あのときよりも…
距離が近づいてきている。
君と俺との間の距離が
縮まって、指が絡まる。
ただ俺は…
この時の幸せをかみしめていた。