蒼side


彼女が普段何処にいるのか、俺は知らない。
学年も…クラスも…。



そんな彼女を好きになるなんて…。
一目惚れ…というわけじゃない。



確かに綺麗な子だな…とは思った。
だけど…それ以上に俺の目をひきつける事があったんだ。



春から夏に変わる頃、ちょうど梅雨に入った頃に俺は屋上で彼女を見た。



遠目で見ただけだけど…彼女は泣いていたんだ。
声も漏らさず、ただ静かに…。



その姿に目を奪われて…その日からすれ違うたび、彼女の事が気になった。



目で彼女を追うようになった。
これが恋だと知ったのはここ最近の事だ。



今まで恋をしたことがなかった。
女の子と付き合ったことはあるけど、ここまで気になったのは彼女が初めてだった。



彼女の姿が頭から離れない。
俺は…異常なくらい、彼女に恋しているんだ。



彼女を探して最後に辿りついたのは、誰もいない放課後の屋上だった。



オレンジ色の夕陽が目の前に現れた。
もう…18時くらいだ。



部活をやっていない生徒なら、とっくに帰っている。



彼女も…部活していなかったら、他の生徒と同じように帰っているかもしれない。



それに彼女が絶対此処に来るっていう確証はない。



廊下以外で彼女を見た場所が此処だったから、もしかしたら…と思って来ただけだ。



「…はぁ」



俺は深く溜め息をつく。
伝えるって決めたのに、彼女が此処にいないことにほっとしている自分がいた。