あたしが…桐谷くんのことを…?
この気持ちは…『好き』という気持ち?
「…分からないの」
彼のことを考えると、胸が苦しくなる。
他の子と付き合っていると聞いて、悲しくなった。
話しかけてくれるのが嬉しくて…
すれ違うたび、ドキドキしていた。
この気持ちを伝えると、彼女は嬉しそうに笑う。
「それが…『好き』なんだよ」
「これ…が…?」
『好き』という気持ち…?
由貴さんを想っていた時の気持ちとは違う。
苦しくて苦しくて…
でも…彼の姿が頭から離れない。
「彼のこと…好きだったんだ」
なのに…あたしは彼を傷つけてしまった。
だから…彼は彼女を作ったのかな?
「ねぇ…芹奈ちゃん。お願いがあるの。…聞いてくれる?」
「お願い…?」
誰かに頼られるのは初めてだった。
あたしは由貴さんばかり頼ってたから。
頼られたら…断れるわけないじゃん。
「あたしに出来る事だったら…」
「芹奈ちゃんにしかできないことなんだよ」
そう言って杪ちゃんはぎゅっとあたしの手を握った。
小さくて温かい手はあたしの心にしみこむ。
「蒼くんを…助けてあげて」
「…え?」
まさかそんなお願いだとは思わなかった。
桐谷くんを…助ける?
「どういうこと?」
「これは…口止めされてたんだけど…」
そう言って杪ちゃんは全て話してくれた。
桐谷くんが付き合っているのは、あの女の子だった。
森川 愛はあたしが邪魔だった。
純粋に桐谷君のことを想っていたから…
彼女は桐谷くんにあたしを嫌っている子はたくさんいると言った。
桐谷くんがあたしを想っていると、他の子があたしを傷つけると。
それを知った桐谷くんはあたしを守るために、あの子と付き合った。
自分の想いを犠牲にして、あたしを傷つけないように…