久しぶりの学校はどこか変な感じがした。
廊下を歩くと周りとは違う景色。
すれ違う人たちもどこか違う気がした。
だけど…すれ違う人たちの中に、彼はいない。
由貴さんに少しだけ聞いた。
『彼』は女の子と付き合っているって。
その瞬間、あたしの目から涙がこぼれた。
そんなあたしを由貴さんは優しく抱きしめてくれた。
『もうすぐ…分かるよ』
どうして涙が出るんだろうと呟いたあたしに由貴さんはどう言った。
きっと…由貴さんは大切な彼女の元へ行ったんだと思う。
『ありがとう』というたった一言のメールが凄く嬉しかった。
少しだけ、前に進めているのかな?
変えてくれたのきっと『彼』
あたしが教室に入ると、皆のひそひそ声が聞こえる。
そんな声の中、あたしが自分の席に座ると、一人の可愛らしい女の子が近寄って来た。
「芹奈ちゃん、おはよう」
「お…はよ」
まさか自分にあいさつを交わしてくれるなんて思わなくて、驚いてしまった。
目をぱちぱちさせながら、あたしはその女の子を見た。
同じクラスの子っていうのは覚えているけど、名前が思い出せない。
あたしは戸惑いながら彼女を見ていると、彼女はやんわりとほほ笑む。
「あたし、杪。あたしの彼氏が蒼くんと親友なんだよ」
「桐谷くん…と?」
桐谷くんの名前を聞いた瞬間、ドキンッと胸が高鳴る。
「蒼くんが…彼女を作ってからは話さなくなったけどね」
「やっぱり…彼女出来たんだ」
由貴さんの話を聞いた時、嘘だと思った。
彼は…桐谷くんはずっとあたしのことを好きだと思っていたから。
それはあたしの慢心だった。
彼は…あたしをもう、想っていない。
今までのように話すことも出来ないのかな?
「そこで…芹奈ちゃんに聞きたいことがあって…」
「…何?」
「蒼くんのこと…好き?」