俺の気持ちは…心は…
ただ純粋に『君が好き』ということ。



「誠…ありがとな」



『いいえ、どういたしまして』



嬉しそうにほほ笑む誠の笑顔が浮かぶ。
俺は電話を切り、後ろを振り返った。



そこには悲しそうにほほ笑む、愛の姿があった。
愛はさっきの電話の会話を聞いていたかのように尋ねる。



「先輩…芹奈さんの傍にいるんですか?」



「愛…聞いてくれ…」



「聞きたくないです!!」



そう言って俺の手を払う。
彼女の目は涙で濡れていた。



「あたしだって…先輩のこと、好きなんです。そう簡単に…諦めるなんてできないんです!!お願いだから…もう少しだけ傍にいてください」



愛は俺の腕を掴み、懇願する。
俺はそんな愛を引き離すなんてできなかった。



彼女の想いは…俺とよく似ている気がした。
簡単にあきらめるなんてできなくて…少しでも傍にいたいと思ってしまう。
今のおれと似ている気がしてこの手を離せなかった。



「お願いです…先輩」



「きっと…このまま俺のことを好きでいても…愛は幸せにならないと思う」



「それは…先輩も同じでしょう?」



彼女はそうほほ笑む。
俺は思わず苦笑した。



「俺はいいんだよ。愛は…女の子なんだから」



「関係…ないです。傷つくのは同じですから」



愛は一筋縄ではいかない。
思ったように諦めてくれない。



「先輩…あたし…思い通りにはなりませんから」



そう言って彼女は微笑み、俺の元を去っていく。
冷たい風が俺の横を通り過ぎた。