話を聞き終わった瞬間、俺は彼女が言っていた言葉を思い出した。
『一人だけ…いてくれたらいいの、あたしの事…好きでいてくれる人…』
あれは…芹奈の過去の出来事があったからなんだ。
彼女の人嫌いの原因は…過去の出来事が原因だったんだ。
大切な人が…大切な人のせいで死んでしまった。
そして…その大切な人は自分にとって大切な幼なじみの母親と再婚した。
彼女にとって…辛いことだっただろう。
「桐谷」
遠藤先生は真っ直ぐ俺を見る。
「芹奈に…関わらないでほしい」
その真っ直ぐした頼み込むような目から俺は目を離すことができなかった。
俺のせいで…芹奈が傷ついた。
過去の出来事とおなじくらいに…傷つけてしまったかもしれない。
そんな奴を…遠藤先生は芹奈に近付けたくない…か。
「先生…芹奈のこと、好きなんですか?」
それならきっと…俺に勝ち目はない。
彼女も…遠藤先生のことを想っているだろうから。
そう思っていると、先生は苦笑する。
「…好きだよ、妹だからな」
妹…として?
「芹奈は…俺の大切な妹だ。傷つけたくないと思うのは当たり前だろ?」
遠藤先生は…彼女のことを妹としてしか見ていないのか?
そういえば…彼女は言っていた。
『あの人はきっと…あたしのこと、彼女と思っていませんから』
芹奈は…遠藤先生が自分のことを想っていないことに気付いていた。
だけど…彼女には遠藤先生しかいないから…