『おはよう』さえ言えない。
彼女前にすると、俺が俺じゃなくなる。
馬鹿みたいだ。
彼女はスッと俺の横を通り過ぎる。
…これが当たり前というように。
彼女にとって、俺はただの一生徒。
特別な感情なんてもっていない。
もっているのは俺くらいだ。
誰か教えてほしい。
どうしたら、この恋が動き出すのか−−−
「声かけなきゃ動き出すわけないじゃん」
と、呆れたように言う俺の親友・倉木 誠(くらき まこと)
そんなことは分かっている。
だけど…動けないんだ、彼女を目にすると−−−
「…分かっている。出来ないから聞いてるんだろ?」
「だろうな」
と、誠は肩を竦める。
誠とは小学校からの付き合いだ。
高校も同じ所を受験し、前と変わらず友情を保っている。