蒼side


次の日の朝、いつもように彼女と廊下ですれ違った。
俺は勇気を出して、彼女に声をかける。



「おはよう」



挨拶すると、彼女は驚いたように目をぱちぱちさせる。
そして…俺をじっと見て、溜め息をつく。



「関わっちゃダメって言ったのに…」



「俺…そういうの、聞かないから」



関わっちゃダメかどうかは自分で判断する。
もう…君のこと、本気で好きになったから…簡単には諦めたくない。



そう言うと、彼女は呆れたように肩を竦める。



「あなたみたいな人…あたし、嫌い」



「嫌いでいいよ、今は」



そう言っていつも通り、教室に向かった。



嫌いでいい。
今は…それでいいよ。
いつか…振り向かせるから。



「早速、やってたな」



教室につくと、先に来ていた誠がおれを見て笑っていた。
見ていたのか…。



「別にいいだろ」



「いや…別に俺に関係ないけど…気をつけたほうがいいって言っときたくてさ」



そう言って、誠は急に真面目な顔になった。
その表情を見て…俺は嫌な予感がした。



「あくまで一部の子達だけど…楠の事睨んでたぞ。お前のファンの子達だろ?」



ファンの子…?そう言われて首を傾げる。
そんな俺をみて、誠は呆れていた。



「いっつも部活見に来てる子たち」



「あぁ…あの子たちか」



そう言われて一部の女の子たちの顔が浮かぶ。



俺は誠と一緒にサッカー部に入っている。
そのサッカー部の部活の日に、必ずと言っていいほど見に来てくれる女の子たちがいる。



あの子たちの事か…と俺は溜め息をつく。



「楠は…壁を作って一人でいる。それにあの容姿だろ?嫌ってない奴はいないと思うぜ?そんな楠にお前が話しかけてるを見たら…何するかわからねぇぞ?」



「…気をつけるよ、なるべく」



「そうしたほうがいい。好きなんだろ?」



「…あぁ。ありがとな」



そんなに…彼女と話したり…近づいたりするのを気をつけなきゃいけないのか?
ただ…純粋に彼女のこと好きなのに…恋しちゃダメなのか?



だとしても…俺は諦めたくない。
初めてなんだ、こんな気持ち。



誰にも…邪魔されたくない。