彼女が嘘をついてるとは思えないから、そういうことなんだろう。



だけど、それを誠に言うつもりはなかった。
俺の心に閉まっておこう。



「あの子は…止めておいたほうがいいよ?」



と、杪ちゃんは言いにくそうに呟くように言った。



「どうしてだよ」



柄にもなく、口調が荒くなる。



「だって…楠さん、皆と壁作ってて…何か…他の子と違う…から…」



「それでも、俺は諦める気ないから」



「杪、こいつに何言っても無駄だぜ?意外に頑固なんだからさ」



と、誠はクスッと笑みを浮かべる。



それでも杪は心配そうに俺を見つめる。



「…傷つくかもしれないのに?」



「それでも…いいんだ」



傷ついても構わない。
彼女のことを諦めるほうが嫌なんだ。
俺は…諦めが悪いから。



それを聞いた杪ちゃんは深く溜め息をつき、肩を竦めた。



「じゃあ…もう何も言わない。でも…これだけは言わせて?楠さんは…自分から壁を作ってるの。彼女の心を自分に向けるなんて…難しいよ」



杪ちゃんが俺の心配してくれているのは分かっている。
だけど、もうこの気持ちは止まらないんだ。



ただただ彼女のことが好きなんだよ。