俺はあの時のことを、今でも根に持っていたりする。
「彼女は楠 芹奈(くすのき せりな)ちゃん。あたしとクラス、一緒だけど…」
杪ちゃんと一緒のクラス?
そんな話、初めて聞いた。
「同じクラス?なんで言わなかったんだよ!」
「だって…まさか告白するなんて、思ってなかったから…」
確かに。
俺は彼女の名前も知らなかった。
誰も告白するなんて思わなかっただろうな。
「それに…彼女、少し浮いてるから」
「…浮いてる?」
「全然クラスに溶け込もうとしないし…いつも一人でいるよ?あの容姿だから告白されてるのをよく見るけど…皆、断ってるみたい」
「…ふーん。ま、彼氏いるみたいだしな」
だったら断ってても、可笑しくないしなと誠は大きく欠伸をする。
誠はそういっていたが、俺は彼女に彼氏がいないと思っていた。
彼女は『あの人はきっと…あたしのこと、彼女と思っていませんから』と言っていた。
好きな人はいる。
けど、その人は彼氏じゃない。

