命ってすごいなって心から思うようになった。三億もの精子の中から卵子に向かって時間をかけてたった一つの精子が卵子に入っていく。

『三億分の一』
それってすごいよな。

この前、看護師の美優ちゃんにこのことを教えてもらったんだ。

「ありがとう」俺は光に微笑んで椅子に座った。
「お腹、大きくなったな」
「そうね。私と聖矢の子供なんだね。幸せだな、ほんと」光はお腹をゆっくり撫でながら俺の顔を見る。

光は高校の時から穏やかな感じだったけど妊娠が分かってからさらに穏やかになった気がする。