君と、




あいにく、今日は風が強いんだ。
だから、あまりうまく聞き取れない。


けれど、段々とその声の正体が二人の男女であると気づくには、そんなに時間はかからなかった。


「それで……私、その」

「うん」


一段一段、階段をゆっくりと息を潜めながらのぼっていく。
その会話は、のぼるにつれて鮮明になってくる。


「…好き、なの」

「そう」


―え?


私は、その言葉を聞いた瞬間、頭の中がフリーズして動けなくなった。
人の告白を、ただの興味で盗み聞きしてしまった。
ああ、なんて悪いことをしてしまったんだ。