「も、もも、もし、きき、君も何か悩みがあるのじゃったら、ワシに相談してみてはくぁwせdrftgyふじこlp」
へぇ、このオッサンにしてはなかなかいい手を考えたもんだ。これなら自然に娘とコミュニケーションを計れる。
実の父親のその提案に、三条は顎に手をやり上を見上げ、少し考える素振りを見せたが、
「遠慮しておきます。自ら自分の弱点を晒すなんて私には考えられません。それも先生みたいな赤の他人には特に」
まるで感情の乗らないその声で、三条は淡々と言い放つ。
元々こいつは感情を表に出さない性質だったし、本人にも悪気はないんだろうが……これはオッサンじゃなくてもキツイだろうなぁ。
そうだオッサンは……あ、立ったまま白目を剥いて、泡吹いてる。
八つ当たりされても困るし、ここは放っておこう。
「それじゃあ先生、今度こそまた。出来ればもうこれっきりで」
「それではさようなら」
返事もせずに固まり続けるオッサンを見送り、俺たちは職員室を後にする。
廊下を歩いていると、三条がこちらも見ずに呟いた。
「是非、私も流君のお悩みを聞いてみたいです。流君の不幸話なら、さぞかし愉快でしょうね」
……いちいち腹立たしいやつだ……。
「……そうだな、今度ゆっくりと、な」
主にお前の父親のことでな。
なんとなく気になって後ろを振り向くと、俺たちが去っても尚固まる、どこまでも気の毒な中年親父が、呆然とそこに立ち尽くしていた。
