「あ、ああ。大丈夫」
何もなかったと言うと、千秋は大きく息を吐き、強く抱きしめてきていた体はもたれ掛るように力を抜いた。
「理科準備室に行ったって言うからさ……心配したよ」
言葉と同時に、またぎゅうっと引き寄せるように抱きしめられた。
「あそこ、一人で行くと食べられちゃうって噂があってさ」
「そんなの、知らなかったんだから」
仕方がないだろう。それに好きで行ったんじゃない。そう言い終える前に、千秋が遮る。
「やっぱ、俺がそばに居るべきだよな」
「……急に何言ってるんだ?」
勝手に避けていたのは千秋じゃないか。
「ん、ゴメン。やつあたってた」
千秋は眉を下げてそう謝った。
「何か怒っていたんじゃないのか?」
結局の所、何が悪かったのだろうか。
八つ当たりだったとしても、今後の為にもそれは聞いておきたかったのだが。
「いや、もういいや。うん。
それより与も怒っていいと思うんだけど」
自分に納得させるかのようにうなずいた後、感じ悪かったろ?と、俺にふってくる。
「いや、俺もいい」
もうこれで、いつも通りになれるのなら。
そうだ俺は、
ただこうやって一緒にいられるぐらいでいい。



