愛する相手を隣から消してまで、同じになりたいと思う気持ちが俺には理解できない。
傍に居てこその幸せなんじゃないか。
そう思うけれど、他人の事に口を出す気はない。
そんな事を考えながら教室へ戻っていると、前方から走る足音が聞こえてきた。
もしかしたらぶつかるかもと思い足を止めると、人影が見えてくる。
「……千秋?」
顔が確かめられるまで近づいたところでそう呟くと、向こうも止まろうとして、しかし勢いが治まらないまま半ばしがみつくようにして俺へとぶつかってきた。
反動でグラついて、体制を立て直した筈なのにまだ揺れを感じる。
それはつまり、千秋か俺のどちらかが動いているという事だ。
視線を下の方へ落とすと、俺の体に回された千秋の腕がわなわなと震えている。
ためらいながらもその腕へと手を伸ばす。
と、触れた途端に千秋はガバっと俯かせていた顔を上げた。
同時に腕の力が強くなる。
「大丈夫?!何も無かった?!」
いつかのトイレの時のように、期待に弾んでいる訳はなく心配そうに、不安混じりに俺を見てそう言った。



