夫婦ごっこ

忙しくしているのはそれだけではないような…。
あの函館への出張以来 恒くんは仕事をしてなくても
ぼんやりと考えこんでいた。


思い切って
「最近 元気なくない?」と切り出した。

「疲れてんのかな~~。気が張ってるからさ。」

「しばらくまともに話してない気がするんだけど。」

「そっか?そんな気はしないな。」


私だってまだ本当は遊びたい盛りなのに…
それでも少しか相手してくれればそれでいいのに
孤独だった。

「習い事とかしたら?暇持て余してんだろ?
いいんだよ。好きな事やってみれば…。
俺たちにはこれから先も子どももいないだろうし
紅波は退屈かもしれないから……どんどんチャレンジしな。」


  子どももいない…んだ…

これからも私は一人なんだよね。

「恒くんはさ・・・子どもとかいらないの?
あ…変な意味じゃなくて…下の丸山さんも子ども
二人目が生まれるけどね…それでいいの?」

「うん。いいよ。俺はあんまり縛れたくないから。
だから紅波に 契約結婚してもらったんだよ。」

「でも…本当にそれでよかったの?」

「もしさ…もしもだよ 紅波がそんな生活はイヤだって
耐えられなくなった時は我慢しないで教えて
離婚にはちゃんと応じるから。」


画面を睨みつけながら恒くんが言った。

「どうして結婚したかったの?
ずっと不思議だったの。私はあの頃居場所がなくて…
簡単にここに来てしまったけど
生活していくと どうしてなのかなって
不思議に思う事ばっかりで。」

今日は会話が続くみたい……。
嬉しい夜になりそう。