夫婦ごっこ

恒くんが帰ってきて 昨日つくった夕飯を食べて
ケーキーをたいらげた。

「紅波 料理の腕あげてるな。」

「ほんと?やった~~ぁ~。」

嬉しくて飛びあがった。

すっごく気分がよかったから 恒くんにもう一本
缶ビールを持って行った。


恒くんが笑顔を見せると 携帯が鳴った。
恒くんは立ちあがって そのまま部屋に戻って行った。

聞き耳をたてて恒くんの部屋のドアに
耳をあてた。

「どうした………うん……そうか……。
泣くなよ……前は………?………そんなに泣いたら
おとうさん心配するだろう……うん……わかったか?」


また優しい声で囁いている。
相手は千鶴さん……。


前さんがいるのにどうして恒くんに電話してくるの?
無神経な人だ……。


「もう……泣くなよ。……おう……おまえは笑顔がいいよ。
あはは……だろ?……おやすみ……。」


私は慌てて リビングに戻った。


すぐに出てくると思ったのに 恒くんはなかなか
戻ってこなかった。

私は食器洗浄機のスタートボタンを押した。
また千鶴さんに邪魔された気がした。


「恒くん……。」ドアを少し開けると
イスに深く腰かけて目を閉じていた。


  何を…考えてるの?

  もっともっとあなたを知りたいの……。