鏡の前に立った私は 世界一キレイな花嫁だった。

「お若い花嫁さんだから 本当にキレイですよ。」
スタッフがいつも誰にでも言う言葉なんだろうと思う
言葉で盛り上げてくれる。

「このドレス こんなふうに着こなせるのはやっぱり
お若いからですよ。」

恒くんはカクテルドレスを派手にして
ウエディングはシンプルなのを選んだ。

右耳の上にピンクの大きな花をつけてベールをかぶった。


鏡の前に立った私は真っ白な純白の花嫁だった。


ついこの間まで髪の毛を金髪に染めてバイクに乗って
夜遊びに興じていた私はどこに行ったんだろう。

奥ゆかしく・・・上品で・・・・
そう見える私が そこにはいた。


今までの私と違う私の誕生だと思った。

たとえ契約結婚で愛がなくても……今日だけは
未来の希望に満ち溢れる花嫁を楽しく


演じようと思った。



「では…参りましょうか。」

スタッフの人がドレスのすそを持ってくれて
もう一人の人が素晴らしいブーケを持たせてくれた。


「ご主人が生花で作ってくださったんですよ。」

「ほんとですか?」

「素敵なご主人ですね。」

嬉しかった。
世界一幸せな花嫁なんじゃないかって錯覚した。