「俺がくだらないことに 紅波を巻き込んで…
申し訳なかった。優しさもなくて昔の女のことで
さんざん心配かけて…年下のまだ子どもの紅波に
いろんなこと教えてもらってさ。
情けないよ。俺は紅波に何もしてやれなかったけど
紅波は俺をちゃんと支えてくれた。
そのお礼もちゃんと言わないで…仕事にかまけて
本当に申し訳ない。
こんな自分勝手な夫婦ごっこで紅波の
人生縛りつけて…悪かったな。
できること何でもして償っていくから……
紅波もここにいるうちにこれから
どうするかよく考えなさい。
出て行くのはいつでもいいから……。」


恒くんも・・・・・
もう私を必要ないって思ってたんだ。

そう思うと切なかった。

もう私・・・・・いらないんだね・・・・・。

だよね だって足引っ張ってばっかで……
女の魅力は千鶴さんに比べたら全くないし……
生意気だし……


嘘つきだったし……

「恒くん…最後に一緒に旅行しない?
温泉でもいい……。パート代もたまってるし……。
それ使ってどこかに行きたいって思ってた。」

「現金は大事にしないと これから必要だぞ。」

「でも…一緒に行きたい。
最後のわがままだから…お休みとれないなら
温泉一泊でもいい……
新婚旅行ごっこもしてないし……
いいでしょ?」

恒くんが微笑んで

「休みとるよ。どこか出かけよう。
北海道じゃないとこにしよう。
紅波が考えて。」


悲しい別れがそこにあるのに
私は嬉しくて

「やった~~~!!」と手を叩いた。