夫婦ごっこ

シャワーから出ようとしたら話声が聞こえて来た。

  また……

私は音をたてずにドアに近づいた。

「今 どこ?……わかったすぐ行くから……。」


  どこかに出かけるの?


慌てて出たら玄関のドアがしまった。


  え・・・・・?


テーブルに簡単な書き置き


  出かけてくる
  先に寝てて。

「何よ……。ふざけんじゃないわよ……。」

怒りで体が震えた。
裏切られた気がして 心が痛くなって
思わず胸をおさえた。


「絶対……千鶴さんだ……。」

よっぽど隣の家を訪ねようかと思ったけど
それが普通の奥さんなら許されても
私の場合は


雇われ妻……。
こういうことになったとしても
騒ぐ資格もない。


騒げるなら責めれるならどんなにいいだろう。

泣いて嘆いて発狂して
心を全部吐き出せたら…楽になれるのに

声を押し殺して泣くことしかできない。


  優しくないよ…私には…。