夫婦ごっこ

帰ってご飯支度をしてると廊下が
騒がしかったから

玄関のドアを少し開けると階段の踊り場で
前さんと恒くんが言い合いをしていた。


「頼むって。俺　担当から降ろさないでって。
誤解されたならちゃんと謝るし……向こうの子にも
迷惑がかかるから。今回は…なんとか…頼む。」

前さんが大きな体を丸くして恒くんに
頭を下げている。

「何度か言ったよな？警告してるはずだ。」

「俺と彼女は別に何の関係もないんだって。
それは千鶴も理解してるし…。」

「おまえな　いい加減にしろよな。
他人が誤解するんだぞ？千鶴だって我慢してんのに
いつになったらそのいい人ぶるの　やめれんだよ。
そういうの偽善者って言うんだ。」

恒くんの言葉がすっごく荒い。


「おまえ…千鶴が悩んでんの知らないのか？」

「って何でおまえが知ってんだよ。」

前さんも語気を荒めてきた。


その時前さんの家の玄関が開いて
千鶴さんが飛び出してきた。


「ちょっと…何してんの？恥ずかしいから…やめてよ。」

「おまえさ　大浦に何喋ってんの？」

「別に…ただ…相談しただけ…。」

千鶴さんの声が沈んだ。

私の心臓もバクンバクンって言ってる。