夫婦ごっこ

涙がポロポロと流れ落ちた。

「どうした?」

「ううん。気にしないで……。
ビオンの魔法にかかっただけだから。」

「泣かす魔法はかけたくないな。」

そう言うとティッシュをつまんで私に
手渡した。

「ありがと…。」

「なんか…辛いことでもあんの?」

「辛い…?う~~ん……
好きになりすぎて苦しい…私初めてなの…。」

「ん?」

「初恋なの。」

ビオンはまたギターを弾いた。

「そっか……。頑張れよ。」

「うん…。でも切ない。辛い……。」


ビオンは首をかしげる。

「なんで夫婦なのに…そんなに切ないんだ?」

「うん…。切ない…。一緒にいるだけで切ない。」

「どんだけ?のろけるんだろ。」

ビオンが缶ジュースをのみほした。


「ね…。夫婦なのに…なんでかな…。」

ビオンの鼻歌が心に響く。