夫婦ごっこ

「この間は・・・ありがとね。
ビオンの歌聞いてなんか心が安らいだよ。
あの歌聞かなかったら…。」

そう考えると怖くなった。
きっと恒くんに真相を迫って そして落ち込んでいた。

あの優しくて幸せだった一夜は過ごせてないだろう。

「なんで夫もちのおまえが片想いの
曲を聞きたがるんだ?」

「……私もやっとそういう気持ちがわかってきたから。」

「結婚してんのに?」

「結婚してっからって心が充実してるとは
限らないんだよ。奥が深いの。」

「わかんないな~俺 恋したことないから。」

「付き合ったこととかないの?」

「あるけどさ…心を焦がす熱い恋はまだ
したことないんだよな。
だから冷たいとか言われて
すごに終わっちゃうし…なんだか…不発な感じ。
人を自分よりスキになれないんだよな。」

「わかるわかる それわかる~~。
私も全然そうだったの。結局心を開けない。
素直になれなかった……。
でもね…今は今までしたことのない想いが一杯で
切ないくらいなんだ。」

ビオンがギターを弾いて鼻歌を歌った。

ビオンの奏でる音は心に響く……。
優しい魔法が私を包んでくれる。