部屋に戻ると 恒くんが
「ずいぶん 入ってたんだな。心配したんだぞ。
倒れてんじゃないかって。」


お風呂の中で涙が出るたびにお湯で顔を撫ぜた。


「まっかになって…のぼせてるんじゃないか?」

めずらしく恒くんが心配をして私の頬をおさえる。
心臓がキュンキュンしてきた。


「うん ちょっとボーってしてる。」
嘘をついた。
もう少し心配させてやる。


恒くんは布団を出して敷いてくれた。

「ほら 横になって。」

私の手を引いて横にした。


「ここのお湯 熱いだろ。
浸かりすぎたんじゃないのか。」


冷たいタオルをおでこにのせてくれる。

「うん…具合悪い…どうしようかと思った。」

涙が出て来た。

「泣いてるのか?バカだな。下から電話くれれば
迎えに行ったのに。」


「だって…ヒック……。」思わず嗚咽


悲しい涙は我慢できなかった。
だから…具合が悪くって心細かった涙にして演技した。



怒ることなんかできないもん
恒くんと私は ただの夫婦ごっこだから


「バカだな。」恒くんは今日
めっちゃ優しすぎて めっちゃ泣けてくる。