夫婦ごっこ

「高校…生?大学……」そう言いかけたおばあさんが

「結婚してるの?」とビックリした声を出した。


「そうなんです…。ダメでしたか?」

「ダメってことはないんだけど またずい分若い奥さんだこと。」

「卒業してすぐに結婚して札幌に来たんです。
友達もいないし…夫しか話す人もいないから
もっといろんなことしてみたくて…料理はけっこう夫に
褒められるので…勉強がてら……ぜひ働きたいって…。」

「ご主人は了解してるの?」

 

  嘘ついちゃえ…。


「はい。土日も休みだし主人も外に出て社会勉強するのには
いい経験になるんじゃないかって…料理も上手くなれば
もっといいって言ってくれました。」


「ご主人がオッケーなら…そうじゃあ…月曜日から
早速来てくれるかしら?エプロンはうちのがあるから
普通にジーンズにシャツで服装はだらしなくならないように
してくれたらいいわ。」


そんな簡単に決まるとは……
正直心臓がドキドキいってる。


「うちは昼はライブハウスを利用する常連さんとか
それなりに混むのよ。いそがしいから覚悟してね。」


  覚悟って…

忙しいと思わなかった小さなお店


その時店の玄関から白髪をちょんまげした
おじいさんが入ってきた。