天国からこんにちは

最初は大きなゴリラかと思った 身長は3メートル以上 腕などは人間の胴体ぐらいあるかもしれない 三つ目の下にキバが光る 頭には つのが一本 長い爪  間違いなく鬼である

それが今ガラス一枚のむこうで暴れているのだ 俺は思わず五歩後ずさり
あちこちで悲鳴があがる 鬼はこちらの騒ぎには微動だにせず今まさに電柱を振り下ろした ドン 高級車のボンネットが原型をなくしている タイヤがコロコロ転がりどこかへ消えてゆく ズドン もう一体 一つ目の鬼がドアのそばにどこからか落ちてきた。
一つ目は乱暴にドアを引きちぎる 中にはメガネをかけたひょろっとしたちょんまげ頭の男がおびえきっている 三つ目があごで出ろと合図する 一つ目が腕を地面に叩きつける 
男が転がり出る 一瞬だった 三つ目が男を抱えると もう何処かへ姿を消していた


「脱走ですよ どこへいこうとするんですかね 彼らには人権がない どこでも地獄ですよ  殺されても文句は誰も聞いてくれない あっ驚きました? あちこちに鬼はいますから用心してください」