対するあたしのほうは――意味のわからない言葉の数々に、きょとんとしてしまうだけ。

「ノルマって何の……? カップルを成立って――」

 まさか。

 そんな言葉とその示唆する可能性が脳裏によぎる。

 だって、それはまさにあたしがつい先ほど、この赤いキュートな弓矢を見て連想してしまったものだったから――。

「カップルはカップルだよ。決まってんだろ? 人間の恋を成就させる手伝いだよ! 俺たちアロウ・シューターの役目――お前ら人間が、キューピッドとか呼んでる存在のな!」

 どうだ、わかったか! と鼻息荒く叫びきって、満足しているのかそれとも余計に興奮しているのかわからない美少年。

 金髪、緑の瞳、白い衣装と編み上げの靴。

 うん、確かにギリシャ神話とかに登場する例の存在――キューピッドにふさわしい威厳のある立ち姿に――。

「見えるわけないじゃんっ!」

 はああ? と思いっきり眉を寄せ、負けず劣らず両手を腰に置いて立ち上がったあたしは気づいていなかったのだ。

 頬にいくつも流れていた涙が、いつの間にか乾いていたことに。