「なんかわかんないけど、可愛い……最近はこんなのもあるんだあ。うちの怪獣たちは、間違っても手に取らなかったタイプのおもちゃだもんね」

 なんで子供のおもちゃがこんなところにあるのかはわからないけれど、きっと誰かが置き忘れたに違いない。そうだ、先生たちの子供さんかも。

 そう結論付けて、まじまじと眺めていたあたしは、ふっと笑って呟いた。

「ハート型か……まるでアレみたい」

 今のあたしには酷だけど、と心の中で呟き、脳裏に思い浮かべたのは――弓矢で連想する可愛らしい姿。

 その存在が持っていそうな金の矢に、あたしはそっと手を伸ばした。

「コラーッ! それに触れんじゃねーっ!」

 突然頭上から聞こえた大声に、びっくりして手を引っ込める。

 驚きすぎて言葉を失ったのは、いきなりあらぬ方向から見知らぬ人物の声がした、というだけではない状況のせいだった。

「へ……? て、天使……?」

 顔を上げたあたしが目にしたのは、白く大きな羽。

 もとい、背中からそれを生やした男の子。

 にしては長すぎる金色の髪は夕日を受けてキラキラ輝いていて、まん丸に見開かれた緑の瞳は必死な勢いをそのままに、あたしを映していた。

「天使じゃねえっ! ってそれどころじゃねえや。お前、それに触ったのか? 触ったんだな? 触っちまったんだなあ?」

 日本人には見えない白い肌と整った顔立ちはどこかの彫刻なみに綺麗なのに、開かれた口からは普通のやんちゃな男の子の声がして。

 アンバランスなことこの上ない。というよりも、通常ではあり得ないバランスだ。だって、彼は――。

「う、浮いてる……」

 ひいい、と腰をぬかしそうになったあたしの反応に、ちっと舌打ちまでして、羽付き金髪美少年は一気に距離をつめた。

 つまり、あたしの上空一メートルほどの場所から祭壇を越え、ふわりと目の前に降り立ったのだ。