キューピッド→スクランブル☆

 ベッドの上に置かれたままの赤い弓矢をじっと見つめながら頷く。

 あたしの決意を感じ取ったのかどうなのか、弓矢――恋のアロウ、とやらは全く先ほどと変わらず、可愛らしいおもちゃのように転がっている。

 触れられないソレを複雑そうに見下ろしていたアモルは、気を取り直したように咳払い。

 壁にかけられたカレンダーを指差して、あたしに向き直った。

「タイムリミットは今日から二週間、六月末まで。その間にアロウを射ることがお前の仕事。そんなに難しく考えなくても単純作業だよ。俺もそばで逐一フォローするから、安心しな」

 な? と優しく念押しされて、うん、意外と優しいヤツなんだ――なんて心強く思ったりしたあたしは、この時まだ知らなかったのだ。

 アモルの言う『そばでフォロー』という言葉が、どういう意味を指すのかを――。

 あたしでさえも気づいていない無意識の不安を察知したかのように、金の矢がきらりと光る。

 かくして、あたしのキューピッド――アロウ・シューターとやらの――代行の仕事は、始まってしまったのだった。