「で、あ、あの……その矢で、どうすればいいの? あたし、弓道とかアーチェリーとかやったことないんだけど……」

 矢を射る、なんて簡単そうに言われても、どうしたらいいのかわからないのだ。

 てんで違う方向に飛んでいってしまったら――そんなあたしの単純な疑問は、ふっと笑ったアモルに受け流された。

「大丈夫、何も心配することないって。アロウを射るために大事なのは、まず恋する男女――俺たちの審査を通ったケースのみ、だけど――が同じ場所にいること。そして、二人の想いが間違いなく本物で、二人ともがその想いの成就を願っていること。それだけだ」

「それだけ?」

「そ。その条件が全部満たされた時、アロウ・シューターが放ったアロウは、確実に二人の胸を射抜く。そう決まってるんだよ。アロウ・シューティングって言うんだけど――その役目に必要なチカラは今、お前が手にしてるわけだから、お前が射れば必ず成功するってこと」

「チカラ……ねえ。それで、二人の胸って、二本も射るの?」

 見たところも感覚にも何の変化もないのに、本当なのだろうか? 

 自分の手の平をまじまじと眺めつつ、とりあえず質問を重ねた。

「いや。恋のアロウはカップルに付き一本しかない。どちらが先か後かってのはあるけど、放たれたアロウは二人の胸に届くことになってる」

「そ、そうなんだ……」

 よくわからないけど、一本の矢が順番に二人の胸を射抜くってことなのかな? 

 イメージは沸かないけど、やったことも見たこともないのだから仕方がない。

 あたしにしかできないって言うのなら、とりあえずやるしかないんだ――。