「あっ、えっと、その……まあアロウを不注意で落としちまった俺にも責任の一部はあるわけで――だから、別に百パーセントお前が悪いとかそこまで言うつもりはないっていうか……って、あーくそっ! わかったよ、言い過ぎた。悪かったよ! 謝るから――頼むから泣くのだけはやめてくれっ」

 困ったようにそっぽを向いて話していたアモルが、ついにやけくそのように叫ぶ。

 案外素直に謝ってくれた純粋さに驚きつつ、あたしは首を横に振った。

「違うの、そうじゃなくて――」

「あ? 違うって何が……ってだから泣くなって!」

 説明しかけるとまたあふれてきた涙に反応して、アモルがあせったように言う。

 うん、と頷いてとりあえずティッシュで顔を拭きながら、やっと疑問を口にした。

「その――まだ小さい弟と妹って、何歳?」

「え? えーと、人間の年に換算したら三つか四つくらいかな。な、なんで?」

 なんだいきなり――まさにそんな表情をするアモルに、気にせず次の問いをぶつけるあたし。

「兄弟は? 全部で何人いるの」

「へ? 八人、だけど――?」

「八人も! その生活を全部あなたが養ってるってこと?」

 なんだか近所のオバちゃんみたいに根掘り葉掘り聞いてしまうあたしに、アモルはすっかり唖然としている。

 それでも一応、頭を掻きながら頷いてくれた。

「ま、まあそうなるかな。父ちゃんはずっと前に都に行ったっきり戻ってこないし、母ちゃんは故郷で羊飼ってるけど――もともと親から受け継いだ牧場はつぶれちまったし、今は近所にちょっと売るチーズ作るくらいしかできねえ。牧草代だってバカにならねえし、家族全員食べていく程度がやっとだ。これから育ち盛りの兄弟全部学校へやって、腹いっぱい食わせていくには俺の仕送りがねえとダメなんだよ」