「お、お待たせ――えっとジュース……うわあっ!」

「お、戻ってきたか。おせーよ。時間がないんだからさあ、早く作戦会議しねーと」

 ベッドの上にあぐらをかいて待っていたのは、大きな白い羽をはためかせたアモルだった。

 今度こそ衝撃で落としそうになったお盆とジュースの入ったコップ――と弓矢――は、なんと当の本人がすっと片手をかざしただけで、なぜか空中で浮いたまま、一時停止している。

「えっ、ちょっ、なんで……?」

「なんでって、だってずっとあっちの姿でいたらなんか肩凝るんだもんよー。別にいいだろ? 他に誰もいないんだし」

「あ、えっとそっちじゃなく――」

 あたしの言いたかったことを察したのか、ふっと笑ったアモルは、かざした手を軽くはらった。

 それだけの仕草で浮いていたコップはお盆の上に戻り、あたしの手の中へ。

 そして弓矢のセットは、仰々しくあたしのベッドの上に舞い降りたのだ。

「す、すごい……」

「これぐらいのチカラ、俺程度なら当然だよ。いやーそんな驚かれたらかえって照れるなあ」

 手放しで賞賛されたことで、本当に頬を染めたアモルは、上機嫌のまま弓矢に目をやる。

 そこでまた元の話題に戻らざるを得ないことを思い出したのか、緑の瞳がかげった。

「っていっても、たった一度人間に触れられた程度で凝縮させたチカラを奪われちまうなんて――アロウ・シューターなんていっても、どうせ下っ端の下っ端でしかねえわけだ。話には聞いたことあったけど、まさか自分の身におきるとはな。肝心のアロウに触れることもできなくなるなんて、いくら他のチカラが残っててもこれじゃ意味ねえよ。出来損ないの烙印押されたも同然。あーあ、ついてねえ……」

「あたしが、チカラを奪った……?」

 まさか、たった一度人間のあたしがあの弓矢に触ったせいで――? 

 信じたくなかったその疑問は、無残にも首を縦に振ったアモルによって肯定されてしまった。

 どうやら、本当に本当のことらしい。

 だからこそ、先ほど持ちかけられた提案――というよりほぼ命令に近かった――につながるわけなのか。