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気付くと、いつの間にか彼の友人は帰っていて、閉館の音楽が流れていた。



「俺、そろそろ帰りますけど」


かたん、と椅子から立ち上がり、私に言う。


「じゃああたしも帰る!」


慌ててバッグの中に参考書と筆箱を突っ込んで、帰りの支度を済ませる。

私の支度が終わったのをみとめると、彼は歩きはじめる。
いつもながら、歩くのが早い。



外に出ると、もう辺りは薄暗くなっていて、オレンジから濃紺に侵食された空には、ちらほらと星が瞬いていた。



「まさか今日来るとは思わなかったよ」

「いやー今日起きたら2時でさ、学校の課外サボっちゃった」


彼は笑いながらそう言った。


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