ぎゅう、と不意に手に力が込められる。
彼を見ると、今さっきのことなんかなかったかのように、しれっと参考書を見ている。
何その切り替えの早さ。
さっきの悪戯小学生どこいっちゃったの。
じゃれていたときには余り感じなかったドキドキが全身を支配する。
結局、彼の方が一枚上手。
一挙一動に翻弄されるのは、私の役目。
私も負けじとペンを取る。
「てか、俺こっち利き手なんですけど」
彼は、ペン持てねぇ、と不満げ。
「……じゃあ、反対ならいいの?」
「うん」
聞けば、頷く。
「いいんだ」
私は、笑う。
それは、手を繋ぐのは嫌じゃないってことですか。
そんな風だと、私はどんどん都合よく解釈しちゃいますよ。
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